最高裁判所第二小法廷 昭和30(オ)120 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人植松博一郎上告理由第一点について。
第一審口頭弁論調書に、被上告人の主張として所論のような記載がなされている
ことは記録上明らかである。しかし、被上告人が原審昭和二九年七月一五日の口頭
弁論において陳述した、同年七月一二日付被上告人の準備書面によれば、所論の主
張する原判決事実摘示に照応する記載のあることが認められる。してみると前示第
一審における被上告人の主張は右準備書面によつて訂正されたものと認められるか
ら、原判決には所論の違法はなく論旨は採用できない。
同第二点について。
原判決の認定した事実関係の下においては、原判決が本件不動産の売買代金額を
三五、〇〇〇円と認定したことをもつて、経験則に違背したものとは認められない
から論旨は採用できない。
同第三点、第四点について。
所論は何れも原審のした事実認定を非難するに帰するものであつて、上告適法の
理由とならない。
同第五点(上告理由原文第四点とあるは誤記と認める)について。
原判決の確定した事実によれば、本件売買契約は上告人の元夫であるD(その後
E)寅男が上告人の代理人として被上告人との間に締結され、その代金も完全に支
払済であり、且つその登記についても寅男において上告人を代理する権限があつた
というのである。してみればたとえ所論の如く、右登記手続をなすに当り寅男が上
告人に無断で上告人の実印と異なる印章を作製使用して登記がなされたとしても、
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該登記それ自体は上告人の意思に反するものではなく、且つその実体上の権利関係
にも吻合するものである以上、上告人において本件登記の無効を主張しその抹消を
請求する権利はこれを有しないものと解するを相当とする(昭和二七年(オ)第六
五三号、同三〇年九月九日第二小法廷判決、集九巻一〇号一二二八頁参照)。され
ばこれと同旨に出でた原判決には所論の違法はないから論旨は理由がない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で主文のとお
り判決する。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 小 谷 勝 重
裁判官 藤 田 八 郎
裁判官 池 田 克
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